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小学校前に診療所があり、そこへ主人が事務で勤めていました。診療所の先生と相談し先生にレントゲンを撮ってもらいました。その結果、少し胸が曇っているからマイシンを注射するように言われて毎日打ちました。
片言で「ウマ、ウマ」ぐらいは言っておりました。三歳になって名前を読んでも振り向かないし、返事をしません。おかしいと思いました。
そのころ、近所のおばあさんが一緒に注射を受けていました。おばあさんは、「耳がおかしい」と言ってやめました。私は気がつきません。ただ、「悪いところがあるので発育がおくれている」と思い一生懸命でした。診療所の先生を信じていました。
それからは姫路の耳鼻科を廻りましたが、どこへ言ってもはっきりした原因がわかりません。大阪医大にいきました。先生は、「小児結核であっても、小さいときは神経を使わないから薬で治すこともできたと思います。注射の副作用は医学では治すことはできません。教育をするしかありません」と言われました。大変なショックでした。
先生は、「聴力が少しありますから補聴器をつけて、少しでも早く言葉の練習をするように」と説明しました。
生まれたときから自然に耳から聞こえて言葉を覚えるのに、四歳になって覚えるむずかしさが身にしみました。近所のろう学校の先生に相談をして、五歳で姫路ろう学校の幼稚部へ入園しました。
私の村は田舎ですが耳の聞こえない子供は珍しいくらいです。「つんぼ」と一言われて肩身の

 

 

 

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